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「明日の広場」論点の整理

■市民シンポジウム「明日の広場」090906論点の整理

長時間にわたった今回のシンポジウムで、パネリスト、コメンテーター、また会場よりさまざまな意見、提案が提起された。多岐にわたる視点や論点が噴出し、会場は熱気に包まれた。
各意見については、それぞれ評価される価値があると思われるが、広島の今後の文化をめぐる議論と、旧球場跡地に想定される市民広場をめぐる議論とが行き交い、多少混乱をきたしたことも否めない。それらが、混在した状況にあった。
そこで、今後の議論の深化、発展のためにも、提起されたさまざま論点・視点について、整理が必要と思われる。

まずそもそも今回のタイトルともなっている「明日の広場」の理念をここで再び確認しよう。

●「明日の広場」の理念

広島の地で、人々が感じ、理解しあって、今の営みをよりよいものに、そして希望ある創造をめざし、世界への発信を行う。
 ―広島での新たな市民文化創造の場として―

上記の理念に加えて、特にトピックな問題として、現在旧市民球場跡地に構想されている「市民広場」活用の問題を、今後の広島の文化を考えるための重要なきっかけ・動機、あるいは絶好の機会と捉え、今を逃しては成され得ない議論を市民レベルで形成していこうとする「場」であると位置づける。

この理念を踏まえ、今回のシンポジウムでの大きく二つの論点あるいは主題があった。

●「明日の広場」の論点・主題~二つの問いかけ
【第一の問い】~「明日の文化」をめぐる議論
これからの広島の文化発信=「明日の文化」をどう捉えるのか、どのような方向性や可能性、またどのような企図がありうるのか。

【第二の問い】~「明日の広場=市民広場」をめぐる議論
上記の視点に立つとき、旧市民球場跡地に構想されている「市民広場」は、現実の空間として「明日の文化」を担い実現していく重要な拠点=「明日の広場」となりうるのか。
また「市民広場」の活用や運用について、具体的にどのような方向性や可能性、またどのような企図がありうるのか。

今回提起されたさまざまの論点・視点についてみると、各論点・視点それぞれ、他のそれと深く関連し、相互に浸透し合う性質のものであり、単純に分割・図式化することはできないが、あえて上記二つの議論のフレームのなかに、これらを配置すると、下図(論点・視点の配置図)のように捉えられる。

9.6シンポ論点図式3


では、上の図に従って、各論点・視点また提案について概観してみよう。

●《第一の問い~「明日の文化」》の論点・視点         

【よって立つ文化の方向性とは?】
・「明日の広場」について、私たちは理念的に「新しい市民文化を創造し発信していく場」として捉えている。ではこれからの「新しい市民文化」とは何か、つまり私たちが呼ぶところの「明日の文化」についてどのように考えるのか。
▽「明日の文化」おいて:
・世界的あるいはグローバルな視点で、現在の文化の現実を問うとき、支配的な市場主義的な文化構造とどう向かい合うのか、あるいはそのオルタナティブ(代替するもの)があるのか、あるとすればそれをどう提示していくのか。
・上の考察などを通し、マクロ的な視点で、今後向かうべき文化の姿や文化のスタイルはあるいは文化理念をどう描くのか?「明日の文化」がよって立つ文化の方向性とは、その形成をどう目指すのか。
・これらの議論を、ローカルな広島の議論にどう落とし込んでいくのか。

【主体・アイデンティティー】
「新しい市民文化」=「明日の文化」を支える主体についてどのように考えるか。
▽「明日の文化」おいて:
・世界的あるいはグローバルな視点での議論で、文化の担い手としての想定される「市民」とはだれを指すのか。一なる世界市民なのか。それとも主体性をもった多数で多様な「人びと」なのか。また自立的にふるまうローカル=地域としての主体が確立されるのか。
・多様な主体を想定した場合、主体個々の、またローカル=地域としてのアイデンティティーはどのように形成されるのか。
・上の議論を、広島というローカルな視点に移すと、広島のアイデンティティーについて今どう認識し、今後どう捉えるのか。

【獲得すべき空間・場】
市民が主体的にふるまえる場所や・空間をどのように考えるか。
▽「明日の文化」おいて:
・「明日の文化」の主体~「市民」が主体的に意識を盛り込んでいくことができる空間・場の獲得はどのように可能なのか。
*マルチ・セントラルな場とそのネットワーク的展開という議論も含めて

【「ヒロシマ」をどう捉えるか】
広島で文化を語る場合、圧倒的な影響を与え続け、避けて通れない問題が、カタカナ「ヒロシマ」をめぐる問いかけである。「ヒロシマ」をどう捉えるのか。
▽「明日の文化」おいて:
・「ヒロシマ」をめぐる言説はどう位置づけられるのか。またそのとき「ヒロシマ」の意味や役割はどう捉えられるのか。
・ともすればローカルな事象が、グローバルで普遍的な事象に反映するという、ローカルな視点だけではすまされないHIROSHIMAというローカルな特異性を、どう内面に捉えていくのか。またそのとき、ローカルな視座とグローバルあるいは普遍的な視座、双方をどのように両立させていくのか。

【ヒロシマの記憶】
前項に関連し、「明日の文化」おいて「ヒロシマ」の記憶の問題をどう捉えるのか。
▽「明日の文化」おいて:
・「ヒロシマ」の記憶の継承という問題はどう位置づけられるのか。
・戦後復興期の記憶をどう現在及び未来に活かすのか。
*当時広島が世界から受けた物心にわたるさまざまな援助に対する「恩返し」の議論など

【国際平和文化都市~都市理念の再考】
「明日の文化」おいて広島の都市理念をどのように考えるか。
▽「明日の文化」おいて:
・戦後都市復興の起点となった「広島平和都市記念建設法」をどう捉えるのか。
・同法を起点として出発したその後の都市計画、また文化施策をどう捉えるのか。
・これら「国際平和文化都市」という都市理念は、今後の「明日の文化」形成にとって、どう位置づけられるのか。

【資源】
広島の「明日の文化」おいて、活用されるべき資源とは何なのか。
▽「明日の文化」おいて:
・「ヒロシマ」の力、「ヒロシマ」に関連する歴史・文化的資源、あるいは全世界的な知名度という強みをどのように活用するのか?
・「ヒロシマ」にとらわれない、広島の歴史・伝統・文化資源や自然資源の再認識・再発見及びその活用はどうのように成されるのか?

【仕掛け】
「明日の文化」を推進にあたり、広島の文化活性化のための仕掛けとして何が必要か。
▽「明日の文化」おいて:
〈活動・プロジェクト〉
・「明日の文化」を誘引するためには、どのような活動やプロジェクトが構想されなければならないのか。
・市民によって生まれる多様な活動やプロジェクト、それら個々の活動をどうネットワークとしてつなげていけるのか。
〈教育・文化施策〉
・「明日の文化」の持続的な形成を支える教育や文化施策をどのように考えるのか。
〈文化交流〉
・「明日の文化」を支え、発展させるためには、どのような国内外文化交流の姿が描けるのか。
*文化活動体の国内外ネットワークづくり、世界文化会議の開催等
〈インフラ〉
・「明日の文化」を支えるインフラ整備として何が必要か。
*情報発信、翻訳・通訳サービス、アーティスト・イン・レジデンスの整備、オープンスタジオ等の拠点整備等
〈ホスピタリティー〉
・広島に訪れる観光客やビジター、またアーティスト、文化活動家等に対して何ができるのか。街としてのホスピタリティーをどのように形成できるのか。
・広島人の「もてなす心」の醸成をいかに図るか。
*新たなるアイデンティティー形成を通した新たな自信の獲得によって生まれる「もてなす心」等の議論等

●《第二の問い=「明日の広場」(市民広場)》の論点・視点

【性格と位置づけ】
・平和記念公園と違うのか、違わないのか。違うとしたらどこが違うのか等の議論。
[トポス(土地がもつ力)]   
・市民の自由な創造空間となるようなトポス空間に関する議論。
*押しつけられたシンボル性の付与によって空間の自由度は喪失する懸念が今回の議論でも指摘された。(例えば「折り鶴」設置による影響)

【規制の撤廃】
・都市公園法による規制緩和あるいは撤廃あるいは条例の撤廃に関する問題提起。 
・公園から公共広場へという考え方に関する問題提起。
・特区という考え方(*「広島平和都市記念建設法」を盾にとることも含めて)の提案。

【ソフト】について
[コンテンツ]
・賑わいの創出につながるコンテンツか、芸術・文化発信性を重視するコンテンツか。
*当日実施のアンケートによれば、第一に芸術・文化発信性重視であり、第二に集客性重視であった。
・内に向かった市民生活密着型のイベント等コンテンツ発信か、あるいは外に向かった文化発信重視型か。世界に向かうか、広島の市民に向かうか。「ヒロシマ」を重視するのか、「ひろしま」を重視するのか。
*当日実施のアンケートによれば、世界的な文化イベントを約9割が望んでいるが、定例的な市民イベント開催に対しても約8割が「必要」と答えている。
・他所から招致したコンテンツか、広島発・地元プロデュースのコンテンツか。
*当日実施のアンケートによれば、約9割が広島発・地元プロデュースを望んでいる。
・その他、屋台文化、夜の賑わいの仕掛けづくり等の議論。

[コンテンツの力] ~ 〈集客力〉 〈ツーリズム効果〉
〈誘客力=集客の起点〉
・イベントの継続的に開催にすることで醸成される誘引力を期待するのか。
・イベントにたよらない誘引力の形成は可能か。誘引の起点をアート表現で形成できるのか。
*広島現代美術館からアート・コンテンツを跡地広場にもってくる等(広島現代美術館解体論)
〈集客力〉
・集客性のあるイベントはテンポラリーにしか開催できない。イベントで本当に集客は可能か。
・旧市民球場はそのまま強力なコンテンツ~高校野球やサッカー等、確実な集客力が見込まれる。(旧市民球場保存活用論)。
・人が来ればそれで良いのか。文化発信によるイメージアップあるいは集客は限定的だが質の高いイベントの継続的な開催による誘引力の形成が重要である等の議論。
・集客性のあるものと集客性のないもの-そのバランスのとれた仕組みづくりを考えていく必要がある。

〈ツーリズム効果〉
・周到にプロデュースされたツーリズムに結びつくコンテンツづくりが必要である。
・市民表現型あるいは公民館型のコンテンツは、力が弱すぎてツーリズムに結びつかない。
〈ネットワーク効果〉
・他の文化資源や催しと連動したネットワークで、コンテンツの発信効果を上げるべきではないのか。

【空間・ハード】
・ヨーロッパ型の広場を目指すべきなのか。日本型・広島型の公園型広場空間を目指すべきではないのか。
・空間の自由度を保証すること。また時間をかけてゆっくりと形づくられる自己形成型の空間を目指すべきではないのか。

[デザイン・ポリシー]
・ユニバーサル・デザインの観点の導入。
・サステーナブル・デザインの観点の導入。*「汚く使えること」等の議論。

【運営】
[組織]
・「広場」の統括的な運営組織をどのように捉えるのか。
・「広場」で行われるイベントコンテンツ等、企画やプロモーションを行う組織をどのように捉えるのか。
・運営において市民の参加は可能なのか。そのための仕掛けはそのようなものなのか。
*ネットワーク型のコミュニティー組織の形成、また文化活性化のためのプラットホーム等の形成の必要性の議論等。
[プロジェクト]
・求心力のあるコアとなるべきプロジェクトとは。*世界的な文化芸術祭開催の提案等
・プロジェクトにおける権威づけ、著名人のお墨付きによる効果は必要である等の議論。
[プロモーション] ~〈情報発信〉
・内へ向かう視点:市民による意識の共有をどのように図るのか、そのための情報発信をどのように捉えるのか。
・外へ向かう視点:世界へ向けてどう発信するか。

[運営を支える仕掛け]
*当日実施のアンケートによれば、第一に「情報発信の強化」を約7割が望んでいる。次ぎに、他所からアーティストが参加しやすい環境づくり、文化活動団体との交流やネットワークづくりなど、イベントの企画プロデュースや運営に関連した仕掛けづくりに関心が高い。また日常のイベント展開に密着した仕掛けやサービスへの要望も強い。


●終わりに

前項において、私たちは今回のシンポジウムで提起された各論点・視点そして提案を概観した。言うまでもなく、今回のシンポジウムの目的は、ある統一的な意見を形成し、一つの見解を示すというものではなかった。実際、これらの議論や言説は多様であり、ある場合相反し対立を示している。しかしながらそれらは相互に関連し合い、分割できない一つの複層体を形成しはじめている。私たちはそこに言わば生命体の誕生を見るのである。それはあたかも龍のように、天空に向かって飛び立とうとしているように見える。
今回のシンポジウムを起点とし、さらに広範な市民的な議論の形成へ向かって私たちは進もうと思う。
事実、シンポジウムの終わりにあたり、「テストイベント」の実行提案もなされ、さらなる議論の深化とともに、具体的な行動をもって構想を実証し、パッションの共有を志そうということが提起された…「明日の広場」という場は続く。

| コラム | 10時29分 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑















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